建学の精神と学びの物語
平和を実現する人々は、幸いである、その人たちは神の子と呼ばれる。(マタイ5:9)
自分の十字架を背負って、わたしに従いなさい。(マタイ16:24、平行箇所)
この法人は、教育基本法、学校教育法及び就学前の子どもに関する教育、保育等の総合的な提供の推進に関する法律に従い、学校教育及び保育を行い、建学の精神であるキリスト教の非暴力主義的伝統に基づき平和を造り出す人材を育成することを目的とする。
学校法人旭ケ丘学園寄付行為 第2章 目的及び事業 (目的)第3条
学校法人旭ケ丘学園(以下「当学園」という。)理事会は神の導きを信じつつ、上記寄付行為第3条に謳う建学の精神(キリスト教の非暴力主義的伝統)を以下のように解釈し、これを堅持し具現化するための手段として学びの物語による評価法を用いることを議決した。
建 学 の 精 神
開かれた姿勢で多様性に向き合い、俯瞰する自己を養い、価値を創造的に追及する
· 開かれた姿勢で多様性に向き合う
違いや対立、それに伴うストレスがないことが平和ではありません。平和とは違いや対立を神の創造された多様性として受け入れ(創世記1章)、ストレスに対して開かれた姿勢を保つこと、つまり、それらを早急に解消しようとせずにそれらのあるがままを愛することです(マタイ5:43~48)。それは違いや対立から第三の価値が現れ出ることを待つことでもあります(詩編42:6、12、43:5)。
· 俯瞰する個を養う
平和のために、開かれた姿勢を保つことができるためには、硬直した自己観や物の見方から離れて、今この瞬間を体験しながら様々な観点に立って事物を俯瞰し行動を選択、決断することができる個を養う必要があります(サムエル上16:7、マタイ13:16、Ⅰコリント13:12)。
3. 価値を創造的に追及する
価値は結果ではなく姿勢です。大切なことはゴールではなく方向性だということです。たとえゴールに到達できなくとも、価値に向かう姿勢を持って行動することで活力を感じ満足を得ることができます。価値は成果が確実でない中でもあえて困難に向き合う行動であり、自己決定に基づく創造的な行為です。そして、状況に応じて柔軟に選択できるものです。(箴言19:21、Ⅰコリント3:6、フィリピ2:13)
平和を実現する歩みは、一人ひとりの置かれた場で自分の十字架を背負い、イエスの万物への愛の視座から事物を見ようとする努力の中で、先行きの不透明な世界の中でイエスに従う行動を取るということにあると信じます。
学 び の 物 語
困難な時代の中で非暴力によって平和を希求し道を切り開いて行く人材の育成に効果的な手法として当学園では学びの物語による教育を選択し実施する。
20世紀末、指数関数的に増加する知識量に学校制度が追い付かなくなるという予測があった。そこで考えられた対応策は、教えるべきは知識内容そのものではなく、「学び方の学び」であった。その方策の一つが学びの物語である。これは「学び方」を幼少期から無意識のうちに(habit)、そして意識的にも(willing)身につけることを目指す教育評価法である。
一人ひとりの子どもが学ぶ学び方は多様なものであり、その多様性に即して個別の学びが保障されなければならない。「学びの物語」は神意に基づく子どもの個性的な学びを後押しすることに力点が置かれる。一人ひとりの子どもが、自己の興味関心や難しいと感じる課題に、どう向き合い関与し克服したか、どういう形でコミュニケーションを取り集団に貢献したか等々を、子どもにもわかるように物語にして提示する。このフィードバックによって子どもの学びに向かう傾向(habit)と難しいことに「よしやろう!」と決断して取り組む意欲(willingness)を養うことになる(両者をLearning Dispositionという)。
以上の観点から、学びの物語は建学の精神である「開かれた姿勢で多様性に向き合い、俯瞰する自己を養い、価値を創造的に追及する」人材育成に相応しいものであると考える。
2023年5月27日
2025年3月22日改正
無条件の愛
建学の精神の説明(教職員向け)
建学の精神の説明学校法人旭ケ丘学園はクリスチャンスクールです。職員の皆さんにお願いしたいことは、クリスチャン倫理である「無条件の愛」をもって保育/教育に当たっていただきたいということです。
信仰を持ちなさいということではありません。信教の自由は、実はクリスチャン倫理の中でも最も大切なものの一つです。なぜなら信仰は神と自己との直接的な個人的関係であり、強制されるべきものではないからです。この信念に基づいて信教の自由を世界で最初に法律の条文に取り入れたロジャー・ウイリアムズ牧師は、神との直接的個人的な関係に他人や社会や国家が介入してはならないとして、これを法制化しました。本学でも職員一人ひとりにはご自分の信条をもって保育に当たっていただくべきだと考えています。ここで本学の職員に求めていることは、建学の精神を理解して、無条件の愛をもって保育/教育に当たっていただきたいということです。
「無条件の愛をもって」ということは、子どもたち一人一人が持っている賜物(gift)をかけがえのないものとして無条件に尊敬(respect)するということです。子どもにはその子にしかない個性があります。生まれ持った気質や環境によって与えられる性格から、その子にしかない人生の意味や目的が生まれてきます。それを追求できるように支援していただきたいのです。
けれども現実には子どもの個性を打ち消そうとする力も働いています。みんな同じようにしなければならないとか、楽しさだけを追求しようとする力です。そういう力が働くときには、子どもに自分の個性的な価値を思い出させ追求できるように引き戻してあげなければなりません。
そこで教師に求められる力は「識別力」(discernment)です。何がその子の追求すべきものなのかを見極める洞察力です。ですから、時には子どもに「ノー」をいう必要も出てきます。
一方、教師が陥りやすいのは自分の価値観を押し付けてしまうことです。保育/教育の中で教師が向かわせたい方向というものが出てきますが、それを抑えて子どもに委ね、寄り添っていると本当に素晴らしいものが見えてきます。子どもを思わず尊敬したくなる瞬間です。このように自分の価値観と子どもの価値観を区別するのも識別力の一つです。
個性を育てるということでもう一つ重要なことは周囲の人々との折り合いのつけ方です。隣にいる人にも個性がありますから、お互いに協調することを学ばなければなりません。つまり子どもの内にも他者を無条件にリスペクトする愛が生まれてこなければならないのです。
こうした自分の個性追求と他者への尊敬を統合させるために三つの力が必要になります。
一つは多様性を受容する力です。自分の価値を一旦保留する力と言ってもよいでしょう。これには相当のストレスがかかります。ですから「ストレス耐性」を高めるということも重要になります。
二つ目は自分の視点を離れて全体を俯瞰する視野を持つということです。相手の立場に立つ力と言っても良いでしょう。
三つめは新しい価値を創造する力です。フレーベルは人間の創造性を育てることを保育目標の第一に挙げていますが、これは、「人間は世界を創造した神の似姿である」という信仰から来ています。人間は絶えずコンフリクトの中に生きていますが、そこから絶えず新しい価値を生み出そうとするモチベーションも生まれます。コンフリクトを嫌って、それを失くそうとすると誰かが犠牲になったり争いが一層拡大したりします。
以上の三つの力を養い、自分を大切にしながら他者をも生かそうとする人材――「平和を造りだす人材」(寄附行為第3条)――を育てることが本学の教育目標(mission)です。そのために是非、無条件の愛をもって保育/教育に当たっていただくようお願い致します。